外国の方が日本に来て医療を受けようとすると、医療制度の違いで混乱することがあります。また、医療制度は誰もが興味のある話題なので、海外からのゲストとの間でよく話題になりますし、うまく英語で説明したいところですね。医療通訳を目指す方も、海外と違う日本の制度の特徴はしっかり理解されておいた方がいいと思います。
ということで、日本の医療制度を英語で説明する表現を考えてみたいと思います。今回は医療制度と公衆衛生に詳しい家族に原案を書いてもらいました。(ありがとう!)
日本の医療制度
日本の医療制度は、海外のものを取り入れたり、日本独自のものだったりして、かなりガラパゴス化Galapagosationしています。(Galapagosationは和製英語?というか造語ですが、言ってみると意外と含意が伝わって笑いが生まれたりします。)
フリーアクセス
まず、どの医療機関にもかかれるいうことが特徴です。
多くの国では、家庭医=ファミリードクター Family physician に見てもらって紹介状 letter of reference (referral) を書いてもらってから、専門医specialistに見てもらうという制度をとっています。
このような仕組みをgate keeping といいます。
それに対して日本の医療はfree access といいます。
診療所 private clinicや大きな病院hospital, 大学病院 University hospitalであっても、基本的に誰でもいきなり受診できます。
Japanese medical service is based on the free-access policy.
In your country, you may need to consult to your family physician first to obtain a referral to see a specialist.
In Japan, you can visit any private clinic, hospitals or even University hospitals without referrals.
待ち時間
あと、若干長い時間を待たされることがありますが、日付をまたぐwaiting listはなく、その日のうちに診察を受けることができるというのも特徴です。
You do not have to wait months to be seen by a specialist.
If you ask to see a specialist at the front desk, you may need to wait up to a few hours. But you will be assured to see a specialist on the same day.
旅行客が日本で医療を受ける場合
3か月未満の旅行者の場合は、海外旅行保険で医療を受けることができますが、その場合の費用は日本人が医療を受ける際にかかる費用とほぼ変わりません。
これは、日本の医療サービスにおいて診療点数表といわれる公定価格表があるためです。実は世界にはこれがない国がほとんどなのです。
If you are travelers staying japan for less than three months, you may use your travelers’ insurance.
In this case, the cost of medical service is not much different from the cost Japanese pay for the same service.
This is possible because Japanese public insurance system is based on the public medical fee table, or fee schedule.
ただし、日本人が医療機関にかかる場合と大きく違うのは、窓口で一部負担金copaymentを払えばいいのではなく、一旦全額を支払ったのち、各自が保険会社と交渉してお金を返してもらうreimbursementを求める必要があることです。
There is difference between Japanese residents and travellers. Japanese have to pay copayments of about 10 to 30 percent.
Travellers have to pay the whole amount first, and then claim for the reimbursement to their insurance company.
日本の医療の特徴
日本の医療の特徴をまとめると、
1.待ち時間が短く(数時間程度)、何か月も待たされることはない
2.一旦入院すると入院期間は長い (アメリカでは日帰り手術でも日本では1週間の入院の場合もある)
3.外来の診察時間は短い(海外の診察は長い)
4.医師や看護師を指名できない(別料金で指名できる国もある)
5.病院や診療所に医療通訳はいない。(一部の国は配置を義務化) 必要であれば自分でコンタクトをとる必要がある。
In nut shell, characteristics of Japanese medical service are
- Short waiting time. May be a few hours, but not days or months.
- Once you are hospitalized, you generally stay at the hospitals longer compared to other countries. A condition that requires a day surgery in the US may be a week hospitalization in Japan.
- Doctors spend relatively short time with you. They may spend as short as 3 to 5 minutes to see an outpatient.
- You can not ask for your preferred doctor or nurse
- There is no interpreter at the hospital. If needed, you have to hire one by yourselves.
日本の医療制度改革(参考)
どんな病院にでも自由にいけるのは、日本では当たり前のことですが、海外では小児科医、皮膚科医、耳鼻科医といった専門医にかかるには、家庭医から紹介状をもらい、数ヶ月待つというところが多いです。
えー!不便!と思うかもしれませんが、大学病院などが本来の役割を果たすためには、家庭医または診療所がフィルターの役割を果たすことも重要ですよね。
たとえば、病気になればできるだけ大きな病院で診てもらいたいと思う人が多いのは当然ですが、普通の風邪でも大学病院にかかる人がいます。
そのため、できるだけ診療所(個人開業医のいらっしゃる街のクリニック)経由にしようという動きがあるようです。
大学病院などでは紹介状がない場合、1,000円の追加料金を請求するなどの試みをされているところもあります。
しかし、一度手に入れた自由を手放すことはなかなか難しく、この改革はなかなかスムーズに進まないようです。
Government is trying to shift to gate keeper model where you need to see a family physician first to see a specialist. But it’s hard to let go what you take for granted and the shift has not been successful.
(このセクションは家族の原案ではなく、自分の意見です)
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