通訳ガイド試験(全国通訳案内士試験)の対策

通訳ガイド資格は必要?

通訳ガイド(正式名称:通訳案内士)になるには、全国通訳案内士試験(通訳ガイド試験)に合格し、国家資格である通訳案内士資格を取得する必要があります。

2018年の法改正で資格無しでガイドすることも可能にはなりましたが、だからといって通訳ガイド試験にチャレンジしないのはおすすめしません。
理由は次の3つ。

1. この試験に向けて勉強することで、ガイドの基礎となる知識が得られ、自信につながります。
2. 有資格者は無資格者に比べ、報酬が高くなるだけでなく、エージェントやお客様から信頼されます。
3. プロの通訳ガイドだけが参加できるグループが複数あり、情報交換だけでなく仕事の紹介もあります。なにより「通訳ガイド」という肩書きをつかえるのは試験に合格した有資格者だけです。

自信を持ってガイドしたいなら、資格を取るステップを省くのはやめましょう。

また、長期的に見ても、資格がある方がメリットが多いです。

焦らずまず資格を取りましょう!

それが、みなさんのためだけでなく、ガイドを受ける側のお客様のため、ひいては日本全体の印象をよくすることにつながります。

日本政府観光局サイトからの引用:

全国通訳案内士(通訳ガイド)は、単に語学力が優秀であるだけでなく、幅広い知識、教養を持って日本を紹介するという重要な役割を負っています。外国人旅行者に日本の良い印象を持って帰ってもらうことは、正しい日本理解の第一歩となり、全国通訳案内士(通訳ガイド)の仕事は、“民間外交官”とも言える国際親善の一翼を担うやりがいのある仕事です。

この引用にあるとおり、国際親善の一翼を担う民間外交官として活躍できるのが通訳ガイドなのです。

 

通訳案内士試験について

例年、春に願書受付があり、8月に筆記試験、11月ごろ筆記試験合格者を対象とした面接試験が行われます。

平成30年(2018年)の場合、次の通りです。

願書配付・受付:平成30年 525日(金) ~ 625日(月) 

筆記試験:平成30年 819日(日)
筆記試験合格発表(予定): 平成3011月 8日(木)

口述試験:平成3012 9日(日)
最終合格発表(予定):平成31年  2月 8日(金)

くわしくは日本政府観光局のページをご覧ください。

 

通訳案内士試験の難易度

合格率10〜20%と聞くと、難易度の高い試験のように感じるかもしれませんが、実際は外国語試験で70%、その他の科目で60%前後*の得点で合格できるため、しっかり対策してのぞめばそれほど難しい試験ではありません。

合格率が低いのは、語学力の不足した受験者が多いためではないかと思われます。

中には歴史や地理の科目だけ落ちて、次の年に受け直したという方もいますが、私の周囲で不合格になった方は外国語試験の点数が足りなかったという方がほとんどです。

2次試験の合格率は高い(約2/3の人が合格)ため、まず筆記試験をクリアすることが大事です。

面接試験では、英語力やプレゼンテーション力だけでなく、おもてなしの心、コミュニケーション能力といったものもみられているようです。

丸覚えしたことを必死で暗唱したり、完璧な文法で話そうと頑張るよりも、アイコンタクトを取りながら笑顔で落ち着いて対応することが大切なように思います。

2017年度試験では、英語での受験者数は7,978人。
このうち一次筆記試験合格者数は1,780人(23.6%)。
二次面接試験受験者数は2,122人(前年度の二次試験不合格で再受験した人を含む)で合格率は61.6%。
最終合格者数は1,304人(16.3%)でした。

なお、2017年の時点で、全国通訳案内士の数は約22,000人で、2017年度の通訳案内士試験の合格者は約1,600人でした。このうち約半数が英語ガイドで、そのあとに韓国語、中国語が続きます。

*「全校通訳案内士試験ガイドライン」では合否判定は70点となっていますが、例年受験者全体の平均点に基づいて修正されるため、これまでは60点前後が合否の分かれ目になる年が多かったようです。私が受験した2008年は歴史の難易度が高く平均点がとても低かったようで、自己採点50点前後で合格でした!(それがいいことかどうかは別として…)

通訳案内士試験の内容

筆記試験はこれまで、「外国語(英語)」、「日本歴史」、「日本地理」、「産業、経 済、政治及び文化に関する一般常識」での4科目でしたが、2018年度からこれに「通訳案内の実務」という科目が加わりました。

英語

外国語については記述式試験となっており、読解問題、エッセイなどすべて日本、ガイドに関する内容になっています。

具体的には、英語読解問題(配点25 点程度)、外国語文和訳問題(15点程度)、和文外国語訳問題(30 点程度)、外国語による説明(あるテーマ、用語について外国語で説明する問題(30 点程度)となっています。

また、英検1級、TOEIC900点以上、TOEIC Speaking Test160点以上、TOEIC Writing Test 170点以上のいずれかの条件をクリアしている方は、英語の試験を免除されます。

注意:免除を申請する資格がある場合、それを願書送付時に証明できなければいけません。私は英検・TOEICいずれも免除申請できる条件をクリアしていましたが、願書送付が締め切りぎりぎりになってしまい証明書類を揃えることができなかったため、英語を受験しました…!
でも、受験してよかったと思います。日本文化、歴史などに関する英語表現を集中して勉強したため、今に役立っています。

日本歴史

マークシート式選択問題。

歴史能力検定の日本史1級又は日本史2級、大学入試センター試験の日本史B60点以上(過去五年以内)で日本歴史科目の受験は免除になります。

日本地理

マークシート式選択問題。

総合旅行業務取扱管理者または国内旅行業務取扱管理者の方、地理能力検定の日本地理1級または日本地理2級をお持ちの方は日本地理科目の受験は免除になります。

一般常識

マークシート式選択問題。

大学入試センター試験の現代社会で80点以上(過去五年以内)で一般常識科目の受験は免除になります。

通訳案内の実務

「全国通訳案内士試験ガイドライン」によると、2018年度試験から採用される新しい「通訳案内の実務」という科目では、

全国通訳案内士が通訳案内を行うに当たって 必要となる関係法令に関する知識や旅程管理の実務に関する知識、訪日外国人旅行者 の国別・文化別の特徴等に関する知識、災害発生時等における応急的な医療対応や危 機管理に関する知識について、基礎的な内容について問うものとする。

とされています。

想像しかできませんが、たとえばイスラム教徒の礼拝やハラル食についての知識、地震発生時の対応といったことが含まれるかもしれません。ハラル食についてはこちらの記事を参照。

また、旅程管理は、旅程管理主任者(ツアコン)が行うことですから、旅程管理主任者試験の本などを読んでおくと役立つかも?

また、災害時については「応急的な医療対応」となっていますから、赤十字救急法講習を受けておくと良いかもしれません。私も以前地元でこの講習を受けました。

ガイド時以外にも役立つ知識ですからお住いの地域の赤十字 救急法講習を受けてみてはいかがでしょうか。


 

私の受験対策とお勧めの方法

私が受験したのは2008年ですが、このときにやった受験対策は今も有効です。

大学で通訳ガイド講座を教えていた際の学生や、One-on-oneコーチングで教えた生徒さんにもこの対策を勧め、みなさん次々と合格されています。

「先生の言ったとおりだった!」という感想をもらったときほど嬉しいことはありません。

まず、歴史については高校の歴史教科書を入手し、隅から隅まで読むことをお勧めします。上記のとおり私は日本歴史で高い得点を取ることができませんでしたが、あとで確認すると全ての試験問題は高校の歴史教科書にある内容でした。

本文ではなく図表の横にある小さい文字だったりしましたが…

ということで、合格はしたものの、歴史の深い知識が足りないことを痛感し、合格後に日本歴史の教科書入手して精読しました。

ちなみに私のやった対策法は、まんが「日本の歴史」日本歴史資料集を読む、でした。

楽しく読めるし、実際ガイドする際に必要な知識の8割くらいはカバーできるので実際のガイドにはかなり役立っていて、ぜひお読みになることをおすすめします。

また、試験では写真や図からそれがどこにある何かを判別しなければなりませんから、 資料集は必須です!

地理は、中学生用の白地図に国立公園、国定公園、山、温泉などを書き込みました。これは結構楽しい作業で、実際の試験でも温泉の場所がすぐわかって助かりました。

温泉地の写真から、どこかを判別する問題もあったのですが、これはインターネットで各温泉地について調べておいたのが役立ちました。

プロになってからもずっと使える温泉手帳もおすすめです。写真もたくさん載っているし、泉質に関する情報もくわしいです。

それと、当時使った日本地理の教本は今はもうないのですが、同じような本「完全制覇国内旅行地理」を見つけました。

通訳案内士試験にも対応しているようなので、私が使ったものよりさらに合っているかもしれません。
こういう本って読み物としても面白いし、プロになってからも見せる資料として使えるので持っておいて損はないと思います。

一般常識は、もっとも対策が難しい科目のように思われるかもしれませんが、実はとてもシンプルです。最新のニュースにいつも触れておけば良いのです。

自分からニュースサイトに行くのは忘れがちなので、試験対策中は思い切っていくつかの新聞やテレビ局のサイトを有料購読し、アプリをインストールしてプッシュ配信を設定しましょう。

購読する新聞のおすすめは日経新聞Japan TimesNew York Timesです。

もしやり方がわからないという方がいらしたら、[英語de日本]Facebookグループで気軽に聞いてください。

英語の試験対策は、まず私の英語学習法についての無料メールマガジンの購読をお忘れなく!

そして、このサイト全体が、英語で日本を案内・紹介するための情報になっていますから、[英語de日本] Facebookページをフォローして更新情報を受け取ってくださいね。

英語力に自信がある方はまずは過去問をみて対策しましょう。

そして、通訳ガイドお役立ちグッズページでご案内している私も使っている参考書で日本を案内するための英語表現を学んでおくことをお勧めします。

英語力に自信がない方は、本来、英語はOne-on-oneコーチングで確実に合格までご案内したいのですが、このところずっと満席です。

そこで調べてみたところ、アルクにこんなオンライン講座がありました。英語については目指すはTOEIC900点レベルですから、短期集中で取り組むにはオンライン講座がぴったりだと思います。

英語は本気で取り組めばかならず伸びます。考えるより前にとにかく今日から対策を始めましょう!

この情報が少しでも役立てば幸いです。

これから受験するみなさん、がんばってください!